Apr 26, 2014

研究のうまい見せ方

研究のうまい見せ方について話した。ぼくらのやっている高速化の研究は地味ではないか、とぼくが問題提起をして、先輩と二人で話した。そこで得た気づきがよかったので、ここに記す。

速度的な優位さをうたうとき、ぼくらは「○○倍の高速化を達成」と書きがちである。こうした高速化の数値は直感的でない。これは、研究の下手な見せ方だ。うまいひとは、それを具体的なことがらに結びついた数値に置き換える。例えば「カップラーメンをつくる際、従来方式では3分かかりますが、我々の提案方式をつかうと5秒ですみます」といった具合だ。これだけで、効果がぐっと訴えかけるようになる。数値の選び方にもコツがある。なるべく、聞き手にとって身近なことがらの数値をつかうのがよい。つまり、研究の見せ方は、聞き手にあわせて変えるべきものといえる。

研究内容が実際にシステムとして動くような場合であっても、ただそれを見せればよいというわけではない。むしろ、実際に動くものこそ、その見せ方には工夫が必要である。見せ方のテクニックのひとつに「対比」がある。これはやや即物的なフレームワークかもしれないが、有効と思ったので書く。まずやることは、自身の研究の応用例を、簡単にでもよいのでシステムとして実装することである。そのとき、自身の方式をつかったものと、過去の方式をつかったものの、ふたつを用意する。システムの用意ができたら、それらを並べて、同時に走らせる。そして、その様子を見てもらう。自身の方式をつかったものと比べ、過去の方式をつかったものの挙動がおかしかったり、のろまであったり、ぎくしゃくしていたりすれば、しめたものだ。それを見ているひとは、視覚的に、直感的に、ぼくらの方式の優位さを体験することだろう。
 
ぼくはこれまで「自身の研究のよさが一般のひとびとに伝わらないのは、研究が本質的に地味であるからだ」と考えがちであった。同じ思いを抱えているひとは少なくないだろう。そんなひとに向けて、この文章を書いた。

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